酸蝕症とは

歯の色が変わるのは、表面に付着したステイン(汚れ)・食生活・加齢・治療による修復材料の色調の一致・摂取した薬剤などが原因であることを以前のブログで理解できたと思います。

その中で、内的要因の一つとして酸蝕症という疾患があることを記載しましたが、酸蝕症を詳しく理解していない人や、正しく対処できていない人、酸蝕症で悩んでいる人が最近多く、現代病でもあるため、今回は酸蝕症について正しい知識が得られるように、酸蝕症の原因・症状・対処法などについて記載していきたいと思います。

酸蝕症ってなに?

虫歯や歯周病に続く、第三の歯の疾患として「酸蝕症」が注目を集めています。

実は、私たちが美味しいと感じる食べ物飲み物はほとんど酸性なのです。
中性の食品は味がなく、アルカリ性は苦味を感じます

酸蝕とは、文字の通り、酸によって歯が溶ける病気や症状のことで、私達の歯は、毎日の食生活の中で常に酸にさらされています。
酸により歯のエナメル質成分のリンやカルシウムが化学反応により溶けだしたり、エナメル質がもろくなるだけでなってしまいます。
エナメル質が溶けて、その下にある象牙質が表面に出てくると、エナメル質より柔らかい象牙質は、咬合の中であっという間にすり減ってしまいます。
このような状態を放置しておくと、冷たいものがしみる知覚過敏症になるなど、さまざまなトラブルを引き起こすことになります。

歯の脱灰と再生

酸蝕症の症状

酸蝕症かも・・・?と感じた場合は、以下の症状があるか確認してみてください。

・冷たいものがしみやすい
・歯全体が丸みを帯びている
・エナメル質が濁って見える
・内部の象牙質が透けて見る(歯が黄色く変色して見える)
・前歯の表面がスベスベしてツヤがある
・前歯の先端部分が透けており、ヒビが入ったり、欠けたり、ザラついたりする
・奥歯のすり減りが見られる
・奥歯の深い溝や凹みがなくなり、真っ平らな咬み合わせの面になっている
・歯がしみる

以上のような症状が見られた場合、酸蝕症の可能性が考えられます。
歯科の中で、近年は第3の疾患と言われる「酸蝕症」は、2,014年の調査で、日本人の4人に1人以上が酸蝕症であることがわかりました。欧州7カ国での調査でも29.4%の割合で酸蝕症であると診断されました。

酸蝕症になりやすい人の特徴

酸蝕症になりやすい人は以下の項目に該当する人で、注意が必要です。

  • スポーツドリンクを頻繁に摂取する
  • マウスガード矯正治療中の方
  • フルーツや野菜ジュースを頻繁に摂取する
  • 梅干しや酢漬けを頻繁に摂取する
  • マヨネーズ、ドレッシングなどを必要以上にかける方
  • 健康のために黒酢やフルーツ酢を習慣的に摂取する
  • クエン酸の入った睡眠サプリ、美容サプリ、筋トレ用サプリを飲む
  • 夕食はお腹いっぱいになるまで食べる
  • ワイン、ビール、日本酒、焼酎などをほとんど毎日、就寝前に飲む
  • つわりや摂食障害などで嘔吐を繰り返す方
  • 逆流性食道炎のある方

酸蝕症の原因

酸蝕症の罹患率が上昇している原因を広義で見ると、背景には欧米型の食生活の定着と、健康志向から酸性度の高い飲食物などを好んで摂る方々が増加が挙げられます。いずれにしても、酸が原因なのですが、その酸がどこからきたものかにより、原因が2つに別れます。

酸蝕症の原因のひとつは、酸性度の強い飲食物を口にするなど外因性のものです。
酸性度の高い飲食物や医薬品、サプリメントなどの過剰摂取がその原因です。
酸性の高い食品を図に示します。

ただし、酸性食品とかアルカリ性食品というのは、食品を燃やした灰を水に溶かしてpHを計測したものであり、そのものが酸性かアルカリ性かをしっかり理解する必要があります。

酸蝕症の原因のもうひとつは、体内から口のなかに酸が出てくることによる内因性のものです。
胃食道逆流症(GERD)、摂食障害(過食症、拒食嘔吐)、アルコール依存症・つわりなどがその原因となります。

酸蝕症の対処法

歯が酸に対して溶けはじめる境界の酸性値を、臨界ペーハー(臨界pH)といいます。
臨界pHの値は5.5とされています。口の中のpHが5.5くらいの酸性に下がると歯の成分の、リンやカルシウムが溶け出すとされています。

酸蝕症を防ぐための対処法としては。

  • 酸性の飲食物を口にした後には、口を水でゆすぐ
  • 酸性飲食物をだらだらと長時間食べたり飲んだりしない
  • 寝る前には酸性の飲食物を控える

といった対策が必要です。

唾液は酸性になった口腔内の状態を中性に戻す役割があります。
これは、以前のブログにも記載していますので、詳しく知りたい方は、こちらからチェックしてみてください。

「唾液の役割とドライマウス」https://smile-steps.com/archives/213

夜間は唾液の分泌が減少するだけでなく、口を開けた状態でいびきをかくと、口腔内の酸性度が中性になりにくく、歯が長い時間 酸性にさらされることとなります。

もう一つ注意点として、酸性の飲食後はエナメル質がダメージを受けて、表面の硬度が低下しているため、すぐに歯磨きをせず、30分程度の時間をおいて行うようにすることが良いとされます。

加齢とともに唾液の分泌は減少するため、口腔内の潤いに注意することも重要なポイントです。
シュガーレスガムなどの摂取は、唾液の分泌を促進するため、大変おすすめです。

内因性酸蝕症の場合(逆流食道炎や頻繁な嘔吐が原因)は、病院での受診の必要性も考えらえます。

まとめ

酸蝕症は、現代では「第3の疾患」と呼ばれるほど多くの人に見られる生活習慣病と言えます。

酸性食品は、すべてを避けることは難しいですがしっかりと正しい知識を身につけることで、大切なエナメル質を守ることができるのです。
エナメル質は、一度失われると再生してくれませんので、一生大切に使わなければならない歯のプロテクト層なのです。

そして、エナメル質が溶けて、薄くなったり・失くなってしまい内部の象牙質が見えてくると、歯の色は黄色く変色したように感じてしまうので、酸蝕症にならないことが白い歯を維持するために大切なのです。

綺麗な笑顔・スマイルをするために酸蝕症には注意しましょう!

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